心に残る風景 洗濯岩海岸(島根県)
私の生まれ育った島根県には、数々の美しい景色があります。
東京で造園業を営んでいる今でも、ふと故郷の景色を思い起こすことがあります。
島根県松江市島根町大芦(おあし)海岸の「洗濯岩」は、砂岩と頁岩の互層(交互に重なり合った地層)からなり、粘土質の頁岩がより多く波に浸食されて洗濯板のようになったものです。珍しい景色ですが、長い年月をかけて創られた造形芸術のようにも思えてきます。
人々は、自然に畏敬の念をもって、長きにわたり自然と調和してきました。庭園の石組は、人間が神秘的で雄大な自然石を崇拝した磐座(いわくら)を源としているとも考えられています。
平安時代に書かれた、最古の作庭秘伝書と言われる『作庭記」にはこう書かれている。
「或人のいはく、人の立てたる石は、生得の山水にはまさるべからず。ただおほくの国々を見侍しに、所ひとつにあはれおもしろきものかなと、おほゆる事あれと、やかてそのほとりに、さうたいもなき事そのかすありき。人のたつるには、かのおもしろき所々はかりを、ここかしこにまなひたてて、かたはらにそのこととなき石、とりおくことはなきなり。」
意味は、「ある人の言うには、人の立てた石は、自然の山水には勝てない。ただ多くの国々を見たところ、ある部分に美しい景を見出しても、その周りにはそう大したこともない景のあることが多い。人が(庭を造る人)が石を立てる時には、自然の景の優れた部分を、あちこちに思い浮かべて立て、つまらない景は取り入れなくても良い。」と言うことです。
洗濯岩海岸の景は、私の中で、とても「おもしろき所」のなかの一つです。
庭を造る時に、何かと判断に迷うことがあります。作庭記に書いてあるように、今まで以上に美しい景色を注意深く見て、学び、その感覚を庭に取り入れていきたいと思います。
島根には、この他にもたくさんの美しい景がありますので、今後帰郷した際に写真を撮って紹介していきたいと思っています。
